閉鎖性海域の水環境に関しては、
海域流入負荷の増大
干潟、沿岸部浅瀬の喪失による浄化能力の低下海域面積の減少、地形の改変による、海水流れ、
海水交換への影響
水産漁業の場としての海域利用などが特に近年に人間の活動による直接的影響と考えられ、戦後50年間において著しい。
閉鎖性海域の海水浄化には、これら3つの要因を念頭に置いて、技術的な可能性について述べる。
4. 閉鎖性海域の海水浄化
近年の閉鎖性海域の水環境の悪化の原因を追求していくと、環境修復が容易でないことは明らかである。つまり、汚染は深刻であり、広範に及んでいる。
したがって、環境創造、環境修復への取り組みとして次の3つを考えてみた。
環境配慮型港湾・海岸整備事業の推進
シーブルー型事業の推進
海水の浄化を目的とする事業の推進
以下順に述べる。
4−1.環境配慮型港湾・海岸整備事業の推進
港湾事業、海岸事業に限らず環境に配慮して事業を推進していくことは、いずれの事業とて変わりない。
関西空港が大阪湾内に埋め立てで建造された。工事開始時から数えると10年以上経過した(図-1参照)ことになる。この間に周囲の緩傾斜護岸には海藻がはえ、プランクトンが集まり、浮魚が見られるようになった。大阪湾全体として生態学的にどう評価するかは別課題として、護岸周辺には明らかに新しい生態系が生まれた。この緩傾斜護岸は当初からこのような生態系の創造効果を狙ったわけではなく、
軟弱地盤である、
内湾のため波は小さい、
将来拡張工事があるため護岸は埋めごろしになる
などの条件から緩傾斜護岸が最も経済的であるとの理由から選定されたものである。結果的には、上記のような効果があった。構造物の本来の目的と環境配慮が期せずして一致した例である。引き続き調査が実施され、関空二期工事にもいかに反映すべきか検討中である。
また、護岸や防波堤は来襲する沖波のエネルギーをできるだけ吸収するように設計する。このようにすると、構造物前面での曝気効果も大きくなることが分かっている。
北海道・様似漁港では、背後に小段部を有する複断面傾斜堤となっている(図−2参照)(参考文献1)。
この構造は傾斜堤により越波防止機能を高める一方、背後の小段部はコンブ群落の創出を狙っている。
この他、護岸や防波堤もこれら構造物に作用する波圧を小さくするために穴明きタイプにすることは水交換の促進や生物学的にも有意義となる。
以上の例は構造物本来の機能を高める努力がそのまま環境配慮になる例である。こうした例は他にもいくつかあるはづである。
ところが、構造物全てが本来機能を高めることが環
Fig. 1 Gentle slope gravel-type breakwaters
Fig. 2 Sloping breakwaters with rear step
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